030743 ランダム
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薬 天 市 場

薬 天 市 場

『日曜の朝』

 日曜の朝には、コーヒーを入れよう。
 インスタントなんかじゃなく、お気に入りの店で買った、とっておきのエスプレッソロースト。
 コーヒーは贅沢に使い、ホットウォーターとホットミルクを用意する。マグカップは前の誕生日に恋人がくれたお気に入りだ。
 部屋にはコーヒーの香りが漂う。


 あとはトーストを焼き、目玉焼きをつくる。
 近所で評判のパン屋。そこの定番商品の食パン。自分の好きな厚さに切って、トースターに入れる。ぼくはわざと厚めに切る。
 目玉焼きはベーコンを下にひき、黒胡椒を少しかける。
 ポットとトースターとフライパンがキッチンで同時に活躍する。
 それがぼくの日曜の朝。


 トーストと目玉焼きには、塩をかける。
 その塩気はよりいっそうコーヒーの味を引き立ててくれる。
 一杯目はアメリカンのブラック。


 一杯目を飲み終える頃に、ちょうど朝食が終わる。
 するとぼくは新聞を取りに行き、窓を開け、部屋に充満する日曜の空気を入れ替える。
 そして二杯目のコーヒーを入れる。二杯目はラテと決めている。そのためのホットミルク。

 新聞を広げてゆっくり体と頭を朝になじませる。
 そのうちコーヒーが体に行き渡るようになる。
 新聞をスミまで読んで、テレビをつける。すると、この一週間におきた出来事を評論家たちが討論している。いろんなチャンネルを回すが、すぐテレビを消す。
 目の前にあるマグカップ。もうコーヒーはなくなっている。あるのは、ミルクの白い泡だけだ。


 カーテンが風になびく。
 少し冷たい空気が部屋を回っている。窓を閉めて、お湯を沸かす。熱々の3杯目のコーヒーをいついれてもいいように。
 そして、これはゆっくり飲む。カーテン越しにやわらかい陽を浴びて、ゆっくり飲む。
 コーヒーの香りが、きれいな空気に馴染んでいく。やわらかく、そしてちょっと優雅に馴染んでいく。




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